仕事中にワニの来訪。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑤〜
こんにちは。マミです。
今日も、ゆる〜いペースでロシア語のことを書いていきますよ〜。
前回に引き続き、ソ連時代の愛くるしい人形アニメ「チェブラーシカ」のロシア語台詞を細かく解説してまいります。
※作品情報や「チェブラーシカ」プロジェクトを始めるに至った詳細などについては、こちらの記事をご覧ください(移転前の元ブログへのリンクです)。
また、既に解説済みのエピソードについては、下記リンクをどうぞ(こちらも元ブログ)。
現在解説中の『シャパクリャク』これまでの記事はこちらです。
カミカミアナウンスの魅力。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その①〜
ロシア語は流行歌も美しい。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その②〜
ボクが荷物を運んで、キミがボクを運ぶ。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その③〜
シャパクリャクの、甘〜い生活。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その④〜
前回、森の中に狩猟用の罠を仕掛けまくるという迷惑行為をはたらき、シャパクリャクの返り討ちにあった旅行客たち。
何やら話をしながら、こんどは川のほうへやって来ました。
旅行客1:Да ну их, эти капканы!(まさか、罠があるなんてね。)
旅行客2:правильно!(まったくだ!)
旅行客1:Будем рыбку ловить. Давай динамит.(魚を捕ろうか。ダイナマイトをくれ。)
旅行客2:Бери.(ほらよ。)
"да ну"は「(不信・疑惑などを表して)まさか、本当に?」という意味で使われる表現。
"капканы"は名詞で「罠」をあらわす"капкан"の複数主格形。
まさか、自分たちが仕掛けた罠に引っ掛かるなんて…一体誰が? と信じられない様子の旅行客たちです。シャパクリャクの仕業だとは気付いていないようですね。
これに懲りて大人しくしているのかと思いきや、次は"Будем рыбку ловить."とのこと。
"рыбку"は「魚」を意味する名詞"рыба"の指小形、"рыбка"の対格形です。
"ловить"は「捕まえる」という意味の不完了体動詞。
"динамит"は発音からもわかる通り「ダイナマイト」ですね。
"бери"は「取る、つかむ」などを意味する不完了体動詞"брать"の単数命令形で、「ほらよ、ここにあるぞ」くらいの意味でしょうか。
旅行客たち、魚を捕るのにダイナマイトまで用意しているんですね。
釣ればいいのに! ほんとに迷惑な奴らだ…。
リーダー格らしい一人がダイナマイト(に見える何か)を川へ投げ込みつつ、地面に伏せて叫びます。
旅行客1:Ложись!(伏せろ!)
旅行客3:Братцы!(おい、見ろ!)
旅行客1:Что? Рыба?(何? 魚か?)
旅行客3:Это ж торт ... настоящий!(これはケーキだよ…本物の!)
旅行客2:А что же мы бы братцы(?) есть будем?(こんなの食う奴がいるか?)
"ложись"は「伏せる、横になる」という意味の不完了体動詞"ложиться"の単数命令形です。
みんなでうずくまって様子を見ますが、ダイナマイトが爆発する気配は無し。
のっぽの「旅行客3」が川面を見ると、ダイナマイト(らしき箱)から出てきたクリームが浮かんでいます。
"братцы"というのは「兄弟」の愛称形"братец"の複数形。ここでは、兄弟というよりも「おい、お前ら」と仲間に呼びかけていますね。
なんと、彼らがダイナマイトだと思っていたものは、シャパクリャクが前回のイタズラの際にすり替えておいた"торт"(ケーキ)でした。(間違えるか、普通…?)
で、最後の旅行客2のせりふについては、ネットスクリプトと日本版DVDで内容が異なっていたため自力で聴き取ってみましたが、合っているのか自信はありません。
文の構造もよくわからなかったのですが、一部語順を変えて"мы будем есть"(私たちは食べるだろう)というところから、「こんなもの食べる奴って何やねん?」的な意味かと思いました。旅行客2はクリームを口に入れてからすぐ「カーッ、ぺっぺっ」てな感じで吐き出していましたが、川に浮かんでいる生クリームなんて食べるもんじゃないですよね。
さて旅行客たち、これでもう今度こそ懲りるかと思いきや、また次なる手段に出たようです。
旅行客1:А сеть на что?(何のための網だい?)
旅行客3:Голова ты, Петя! Зазвонит - тащи!
(おまえ賢いな、ペーチャ! 鈴が鳴ったら引けばいいんだな!)
旅行客1:А придумал кто?(で、考えたのは誰?)
旅行客2&3:Кто? Петя!(誰かって? ペーチャさ!)
このリーダー格、ペーチャっていう名前なんですね。
"сеть"は「網」ですね。"на что"には「何のために、何の意味があって」という意味があるので、ここでは「いったい何のために網を持ってきたのさ、こういう時のためだろうよ!」と反語的な意味で使っているのだと思われます。
"голова"は「頭」という意味の名詞ですが、「賢い人、知恵者」という意味でも使われます。
"зазвонит"は「鳴り始める」という意味の完了体動詞"зазвонить"の3人称単数形。
"тащи"は「運ぶ、引っ張る」という意味の不完了体動詞"тащить"の単数命令形ですね。
"придумал"は「考えだす、思いつく」という意味の完了体動詞"придумать"の男性形過去。
網で魚を捕るって、そんな大発明でもないような気がしますが…。
さて、ペーチャの網に獲物は掛かるのでしょうか?
3人は網を仕掛けてその場を去ります。そこへ、何やら絵の具のようなものを身体中につけた半裸の子どもたちが登場。チェブラーシカとゲーナもそこに居合わせます。
ゲーナ:Почему вы такие грязные?(どうして君たちはそんなに汚れているの?)
子ども:Мы в речке купались.(僕たち、川で泳いだから。)
ゲーナ:В речке? А кто её загрязнил?(川で? それで誰が川を汚したの?)
子ども:Фабрика.(工場だよ。)
"грязные"は「汚れた」という意味の形容詞"грязный"の複数主格形。
"в речке"は、「川」という名詞"река"の指小形"речка"に前置詞вがついて、前置格に変化した形。「川に、川で」となります。
"купались"は動詞「泳ぐ」"купаться"の複数形過去。子どもたちが川で泳いでいた、ということですね。
"загрязнил"は「汚れる、汚す」という意味の完了体動詞"загрязнить"の男性形過去。不完了体は"грязнить"で、さっき出てきた"грязный"(形容詞:汚れた)の動詞形になります。
"фабрика"は名詞で「工場」ですね。
確かに、川べりに大きな工場が建っていて、何やら排水を川へ垂れ流しているようです。子どもたちの身体の汚れは工場の汚染水が原因だったのですね。
ゲーナ:Подождите здесь.(ここで待っていてね。)
"подождите"は「待つ」という意味の完了体動詞"подождать"の複数命令形です。
チェブとゲーナは、さっそく工場へ様子を見に行きます。
すると、工場から伸ばされたパイプから、わかりやすくドス黒い液体が川へドバドバと流れていくのを発見。
このアニメ、確か1970年代頃に製作されたものだと思うのですが、この頃って日本でも高度経済成長で公害による被害が深刻化していましたよね。
ソ連でもきっと同じように、近代化・工業化による環境汚染が社会問題になっていた頃なのでしょう。
ゲーナ:Безобразие!(ひどい!)
チェブ:Природу отравляют!(自然を壊してるよ!)
"безобразие"は名詞で「醜悪、醜態、無秩序」。ここでは「目も当てられないほどひどい」というような意味で使われています。
"отравляют"は「毒する、汚染する」という意味の不完了体動詞"отравлять"の変化形。ここでは主語をはっきりと特定しない無人称文なので、三人称複数形になっています。
"природу"は名詞「自然」"природа"の対格形で「自然を」となっています。
チェブとゲーナは、さっそく工場の責任者に抗議をしに行ったようです。行動力ありますね〜。
道すがら、工場の中の様子が描かれます。でっかい木を機械でウィ〜ンと切断して、わけのわからない何らかの部品に仕上げられていきます。
そして、奥の部屋のドアには"директор"(工場長)の文字。
ゲーナはさっそくノックしますよ。
工場長:Войдите!(入ってください!)
"войдите"は「入る」という意味の完了体動詞"войти"の複数命令形です。
チェブとゲーナは工場長室に入っていきます。スーツ姿の工場長、いきなりワニと謎の生物(チェブ)が来たものですからとてもビックリしていますが、なんとか平静を装って対応しているのが可笑しいです。
ゲーナ:Здравствуйте!(こんにちは!)
工場長:Здравствуйте!(こんにちは!)
ゲーナ:Мы насчёт... загрязнения реки.(僕たち、川の汚染のことで来たんです。)
工場長:А что, загрязняем?(何ですって、我々が川を汚していると?)
ゲーナ:Очень загрязняете.(とても汚してます。)
工場長:Всё... всё, всё, прекратим немедленно.(全て…全て止めましょう、すぐに。)
"насчёт"は「〜について」。生格を要求するので、"загрязнение реки"が生格形になって続いています。
"загрязняем"は先ほども出てきた動詞「汚す」"загрязнить"の一人称複数形。
次の"загрязняете"も、その二人称複数形ですね。
"прекратим"は「止める」という意味の完了体動詞"прекратить"の一人称複数形。
"немедленно"は「すぐに」。「ゆっくりと」という意味の副詞"медленно"に否定の接頭辞неがついた形ですね。
そう言うと工場長は、どこかへ電話をかけ始めました。
工場長:Зарыть трубу, вы меня поняли?(パイプを埋めるんだ、わかったね?)
ゲーナ:Значит, уберёте трубу?(ということは、パイプをはずすんですね?)
工場長:Непременно.(必ずそうします。)
ゲーナ:До свидания!(さよなら!)
工場長:До свидания!(さよなら!)
"зарыть"は完了体動詞「埋める」。
"трубу"は「パイプ」という意味の名詞"труба"の対格形です。
"значит"は「〜ということは…」と、まとめを表すときの定型表現ですね。
"уберёте"は「除く、取り去る」という意味の完了体動詞"убрать"の二人称複数形。
"непременно"は「確かに、必ず、きっと」という意味の副詞です。
工場長、すぐにパイプを何とかすると請け負いましたが、そんなに簡単にいくものでしょうか…?
果たして、パイプを地中に埋めたくらいで汚染が止まるのか?
と、今日はここまでにいたします。
「チェブラーシカ」、毎回その時代の社会問題や情勢を鋭く描いた表現があるのが興味深いですね〜。工場による汚染水問題、ゲーナたちはどのように解決していくのでしょうか?
次回をお楽しみに!