きれいな緑のプレゼント。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑥〜

こんにちは。マミです。

 

前回に引き続き、お久しぶりの更新シリーズ。「チェブラーシカ」ロシア語解説プロジェクトの続きをお送りいたします。

あんまり久しぶりなので「どんなストーリーだっけ…?」とDVDを見返したりなどしておりましたが、やっぱり「チェブラーシカ」は観ているとホッコリした気持ちになるお話ですね。今日はワニのゲーナが大活躍しますよ!

 

※作品情報や「チェブラーシカ」プロジェクトを始めるに至った詳細などについては、こちらの記事をご覧ください(移転前の元ブログへのリンクです)。

「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ。〜プロローグ〜

 

 また、既に解説済みのエピソードについては、下記リンクをどうぞ(こちらも元ブログ)。

短編一作目『ワニのゲーナ』

短編二作目『チェブラーシカ』

 

現在解説中の『シャパクリャク』これまでの記事はこちらです。

カミカミアナウンスの魅力。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その①〜

ロシア語は流行歌も美しい。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その②〜

ボクが荷物を運んで、キミがボクを運ぶ。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その③〜

シャパクリャクの、甘〜い生活。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その④〜

仕事中にワニの来訪。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑤〜

 

 

前回、「工場の排水が川を汚している!」と抗議しに行った、チェブラーシカとゲーナ。工場長は「川に垂れ流していた排水のパイプを土に埋める」という対策を講じ、これで一件落着…?

 

シャパクリャクНу что, Крокодил, порядок?(どう、ワニさん、うまくいった?)

ゲーナ:Всё! Речка чистая!(全てOKさ! 川はきれいになるよ!)

 

"порядок"は「秩序、規律、きちんとすること」という意味の名詞ですが、この一語で「うまくいく、ちゃんとできる」という意味をあらわすこともできます。

ゲーナも"всё!"(全てうまくいった)と豪語していますね。

 

子ども:Как дела, Чебурашка?(どう、チェブラーシカ?)

チェブラーシカМожно купаться!(泳げるようになったよ!)

ゲーナ:Чур, я первый!(離れて、私が先に行く!)

 

"как дела"は「元気?」と相手に訊くあいさつ表現として初級で習いますが、ここでは「(抗議は)うまくいった? 首尾はどう?」と訊く意味で使われています。

"купаться"は「泳ぐ」という意味の不完了体動詞ですね。

ゲーナが言っている"чур"というのは、子どもに対して大人が「(危ないから)触るな、ここを越えるな」と注意をするときの表現。もとは悪魔除けの言葉なのだそうです。「もう泳げるようになった」と聞いて子どもたちが川に入る前に、まずは大人であるゲーナが"первый"(最初に)泳いでみる、ということですね。

 

ところが実際に川を見てみると、水は一向に綺麗になっておらず汚染されたまま。

 

ゲーナ:Ах, так!(ああ、こんなのって!)

 

"так"はもちろん「このように」という意味ですが、「こんなにひどいことって、あるんだろうか!」「なんてひどいんだ!」という嘆きを表現するときも使われます。同じような意味で"Вот так!"という表現もあります。

 

ゲーナが川にもぐってみると、地中に埋めたはずのパイプの先が川底から出て、また汚染水を出してしまっています。これでは前と変わりませんね。

ゲーナはパイプの先に自分のおしりをポンとはめ、パイプを詰まらせてしまいました。

 

逆流する汚染水で溢れかえる工場。どうやら工場の機械は壊れてしまったようです。んなアホな…とツッコミを入れたくなるところですが、その場しのぎの対策しか取らなかったせいにこうなっちゃったので自業自得…と言っておきましょうか。

 

チェブ:Речка будет чистая! Ура!(川はきれいになるぞ! やったあ!)

 

"будет чистая"は複合未来形で、「(川は)これからきれいになる」という意味ですね。

 

ところで、ゲーナが川から出てこようとした時、旅行客のペーチャが仕掛けた網にしっぽがひっかかってしまいました。

リンリンとベルが鳴り、飛んでくる旅行客たち。

 

旅行客:Братцы, звенит! Что-то попалось!(お前たち、鳴ってるぞ! 何か、かかったんだ!)

シャパ:Прячьтесь!(隠れて!)

 

"братцы"は"брат"(兄弟)の愛称形"братец"の複数形。ここでは「お前ら」くらいの意味です。

"звенит"は「音を出す」という意味の不完了体動詞"звенеть"の三人称単数形。"звенеть"はベルが鳴る「リンリン」やガラスの割れる「ガチャン」などの甲高い音をさすようです。

"что-то"は「何か」。

"попалось"は完了体動詞"попаться"の中性形過去。「命中する、やって来る」などの意味をもつ動詞で、ここでは「仕掛けておいたワナにかかった」という意味で使われています。

"прячьтесь"は「隠れる」という意味の不完了体動詞"прятаться"の複数命令形。

 

チェブラーシカたちは物陰に隠れて、嬉々として網を引く旅行客たちを見守りますが…?

  

旅行客:Наверно, осетрина!(たぶん、チョウザメだよ!)

シャパ:А крокодил вам не нужен?(ワニさんはいかが?)

旅行客:Караул! Спасайся, кто может!(助けて! みんな逃げろ!)

シャパ:Лариска, след! Хватай их! Держи!
(ラリースカ、追うよ! つかまえな! 捕らえるんだよ!)

 

"осетрина"は名詞で「チョウザメチョウザメの肉」。

チョウザメの卵はキャビアとして有名ですが、チョウザメのお肉もロシア料理ではポピュラーな食材なんですよね。まあ、いくら何でもこんな森の中の小川には生息していないでしょうけれど…(笑)。

 

ウキウキして引っ張った先には、当然、ワニのゲーナがいました。

ザバーっと突然現れるワニに、旅行客たちは騒然!

 

"a крокодил вам не нужен!?"は直訳すると「あなた方に、ワニは必要ありませんか?」となります。

"караул!"は前も出てきましたね。「助けてー!」と救いを求めるときの決まり文句です。

"cпасайся"は、不完了体動詞"cпасаться"「(危険を)免れる、逃れる」の単数命令形。

"кто может"は「(逃げることが)できる人」という意味。合わせて、「逃げられる奴は逃げろ!」と仲間に呼びかけているのかな…?この訳だと少し不自然な感じもするけれど…。

"след"は「足跡、痕跡」という名詞。ここではラリースカに「奴らの跡を追って!」とけしかける意味で使われています。

"xватай"は不完了体動詞"хватать"「捕まえる」の単数命令形。

"держи"も「つかむ」という意味の不完了体動詞"держать"の単数命令形で、"xватай"と同じような意味ですね。

 

旅行客たちは命からがら逃げだし、クマネズミのラリースカが追いかけていきます。彼らの運命やいかに…!?

 

 場面は変わって、チェブラーシカ達は駅に戻ってきました。どうやらモスクワへ帰る時が来たようです。

 

子ども:Вот вам подарок.(君たちにプレゼントだよ。)

チェブ:Но это же лягушонок!(カエルの子どもだね!)

子ども:Но он зелёный.(緑色だよ。)

チェブ:Спасибо! Только давайте его отпустим. Пусть прыгает...
(ありがとう! でも、放してあげよう。跳ねていってね。)

 

子どもたちは、チェブラーシカへの餞別に"лягушонок"(子ガエル)をプレゼントしました。ちなみに、大人のカエルは"лягушкa"といいます。

カエルは"зелёный"(緑色)をしています。ゲーナと同じ色ですね。

 

でも、心優しいチェブラーシカは"давайте его отпустим"(放してあげよう)と提案します。

これは「давайте+不完了体動詞の一人称単数形」で「〜しよう」という勧誘の意味になる構文。

"отпустим"は「帰す、解放する」という意味の完了体動詞"отпустить"の一人称単数形です。

"пусть"は「〜させる」という使役の意味を表します。"прыгает"は「跳ねる」という意味の不完了体動詞"прыгать"の三人称単数形なので、「(カエルに)跳ねて行かせよう」となります。

 

ゲーナ:Очень жаль, ребята, что мы ничего не можем вам подарить.
(とっても残念だな、君たち、だって僕らは何もあげられないんだもの。)

子ども:Зачем? Вы нам речку подарили! Чистую...
(どうして? あなた達は川をくれたよ! きれいな川を…)

 

"жаль"は「残念だ」という意味の副詞ですね。

"ребята"は「仲間たち、君たち」と呼びかけるときに使われる語です。

何が残念なのかという内容が、"что мы ничего не можем вам подарить"の箇所になります。「私たちは、君たちに何もあげることができない」という意味。

 

ゲーナは、プレゼントをくれた子どもたちに何も返してあげられないことを気にしています。

ところが子どもたちは"зачем?"(なぜ?)と反応。

その次の"Вы нам речку подарили! Чистую..."という文は、わかりやすいように並べ替えると以下のようになります。

"Вы нам подарили чистую речку."つまり、「あなた達は、僕たちにきれいな川をプレゼントしてくれた」ということですね。

 

子どもたちが緑のカエルをくれたのは、チェブラーシカとゲーナが川をきれいにして、緑の森を取り戻してくれたことに対するお礼だったのです。

子どもたちも、チェブとゲーナもみんな心が優しくて、なんだかジーンと胸にくるシーンですね…。

 

ところで、物語はまだ終わってはいません。

二人のところへ、ワルモノ旅行客達とシャパクリャクも到着! もうひと波乱あるようです。

この続きはまた次回…。このエピソード、あと2記事くらいで終われるかな?

 

では、またお会いしましょう!