シャパクリャクの、甘〜い生活。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その④〜
こんにちは。
またまた1ヵ月以上ぶりの更新となりました。ロシア語をちまちまと解説していく当ブログへようこそ。
今日も、ソ連時代の愛くるしい人形アニメ「チェブラーシカ」のせりふを翻訳・解説していきますよー。
※作品情報や「チェブラーシカ」プロジェクトを始めるに至った詳細などについては、こちらの記事をご覧ください(移転前の元ブログへのリンクです)。
また、既に解説済みのエピソードについては、下記リンクをどうぞ(こちらも元ブログ)。
現在解説中の『シャパクリャク』これまでの記事はこちらです。
カミカミアナウンスの魅力。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その①〜
ロシア語は流行歌も美しい。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その②〜
ボクが荷物を運んで、キミがボクを運ぶ。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その③〜
前回に引き続き、とぼとぼと線路を歩いていくチェブラーシカとゲーナ。
列車の切符を盗まれたので、徒歩で帰宅中なのです。
ゲーナ:И самое главное, Чебурашка, (それで最も大切なことはね、チェブラーシカ、)
что если идёшь по шпалам, то и никогда не заблудишься. Понятно?
(線路に沿って歩けば、決して道に迷うことはないってことなんだ。わかるかい?)
チェブ:Понятно.(わかったよ。)
"самое главное"は、「いちばん大切なこと」"самый главный"の中性形。
何が「いちばん大切」なのかが"что"以下で語られています。
"если идёшь по шпалам"は「もし線路に沿って歩けば」。
前回も出てきた"шпала"(枕木)が、前置詞поの要求で複数与格になっています。
ここでは"идёшь"と二人称単数形(不定形はидти)が使われていますが、ゲーナは「もしチェブラーシカが枕木に沿って歩けば…」と言っているわけではなく、これは「一般的に、誰が枕木に沿って歩いても…」という意味をあらわす「一般人称文」の形です。
英語でも、一般的・普遍的なことがらを説明するときに主語を"you"にするのはよくあることですね。
続いて、"то и никогда не заблудишься"で「決して迷うことはない」。これも一般人称文なので、動詞"заблудиться"(道に迷う)が二人称単数形に活用しています。
"то"は"если"とセットで使われる助詞で、文の前半部分と後半部分のつながりを強調するはたらきをしています。接続詞"и"も強調の意味で挿入されていますね。
確かに線路に沿って歩けば、必ずどこかの駅にたどり着く…はず?
と思いきや、途中で線路の分岐点に遭遇します。
分岐器(線路の進行方向を変えるレバー)が左を向いているので左に進めばよさそうなのですが、ゲーナは何故かおもむろに分岐器のレバーをひねって方向を変えたあと、右側に進みます。
しばらく進むと、この道は行き止まりでした。
…って、このまま分岐器を放っておくと、特急列車がこの行き止まりに突っ込んじゃわない!?
物語はこのあとも、線路のことは振り返らず淡々と進んでいきますが…ここを心配してるの私だけかしら!!?? 大事故になると思うんだけど!!
…と取り乱しても仕方ないので、解説に戻ります。
チェブ:Ой, смотри, Гена, это что? Ягоды?(ねえ見て、ゲーナ、これは何? ベリーかな?)
ゲーナ:Нет, это не ягоды. Это орехи.(違うよ、これはベリーじゃない。クルミだよ。)
"ягоды"は「(イチゴなどを含む)ベリー類」を意味する名詞"ягода"の複数主格形。
"орехи"は「クルミ」という意味の名詞"орех"の複数主格形です。
イチゴとクルミを見間違うのも如何なものかと思いますが、なんとものどかな光景ですね。
そこへ、なんと木の上の鳥の巣(?)から二人を見下ろす人物の姿が!!
ごていねいに双眼鏡でじっくりと観察しています。シャパクリャクばあさんです。
シャパ:Тортик! Шоколадный! Изготовлен 1 -го апреля, свежий!
(ケーキだわ! チョコレートの! 製造日、4月1日。新鮮ね!)
"тортик"は名詞「ケーキ」"торт"の指小形。
"шоколадный"は「チョコレートの」を意味する形容詞です。
"изготовлен"は「製造する」という意味の完了体動詞"изготовить"の被動形動詞過去の短語尾男性形。「製造された」という意味になります。
"1-го апреля"は「4月1日」という日付。"1-го"の部分を文字に起こすと"первого"となります。
"свежий"は「新鮮な」という意味の形容詞ですね。
シャパクリャクばあさん、列車の切符だけでは飽き足らず、二人が持っていたケーキまで奪うつもりかしら…?
一方チェブとゲーナは、観光客たちが仕掛けていった罠(密猟用?)を見つけました。引っ掛かったら金属のギザギザに挟まれて、ものすごく痛そうなやつです。
チェブ:Ген, смотри, что я нашёл! (ゲン、見て、こんなの見つけた!)
ゲーナ:Это, наверно, туристы потеряли. Надо им вернуть!
(これは多分、観光客が落としたんだ。返してあげなきゃ!)
"Ген"は"Гена"の愛称形。チェブがゲーナに対して使う呼び名です。
"нашёл"は「見つける」という意味の完了体動詞"найти"の男性形過去。"что"にくっついて「僕が見つけたもの」となります。
"туристы"は名詞「観光客」"турист"の複数主格形。
"потеряли"は「失くす」を意味する完了体動詞"потерять"の複数形過去です。
"надо им вернуть"は「彼らに返すことが必要だ」。"им"は「彼ら」を表す代名詞"они"の与格形ですね。
それ、落としものじゃないよ〜!! と心配する我々(視聴者)をよそに、ゲーナは無邪気に罠に顔を近づけ…案の定、ガッシャンと罠にひっかかってしまいました。
びっくりして後ずさったチェブも、見事に足を引っ掛けられてしまいます。
更に、そこへ乱入するシャパクリャク。やっぱり足を挟まれちゃいましたね。
シャパ:Караул!! Это ваша работа?(助けて!! あんたたちの仕業かい?)
チェブ:Да нет, мы сами попались.(まさか、違うよ、僕たちも引っ掛かったんだよ。)
シャパ:А кто это поставил?(じゃあ誰がこれを置いたの?)
ゲーナ:Дуристы...бррр... туристы!(りょごうぎゃ…うーん…旅行客だよ!)
"караул"は元々「衛兵、護衛、警備」を意味する名詞ですが、この場合のように「助けて!」と叫ぶときにも使われます。
続いて"это ваша работа?"とシャパクリャク。ここでの"работа"は「作業、活動」の意味ですね。
罠を仕掛けたのはあんたたちかい? とシャパクリャクに凄まれて、チェブもびっくり。
"да нет"は「はい、いいえ」と言っているのではなく、この場合の"да"は強調の意味で「まさか、そんなわけないよ!」と強く言っているわけです。
"попались"は「捕らえられる、わなにかかる」という意味の完了体動詞"попаcться"の複数形過去。
"сами"は"сам"の複数主格形で「(僕たち)自身」という意味になります。
"поставил"は「置く」という意味の完了体動詞"поставить"の男性形過去です。
一体誰がこんな罠を…!?
シャパクリャクは烈火の如く怒りだします!
シャパ:Я им покажу, как Чебурашек обижать!
(私がそいつらに見せてやるわ、どうやってチェブラーシカをいじめるのか!)
Браконьеры несчастные! Я вас найду!(不幸な密猟者たち! 見つけてやるわ!)
"покажу"は「見せる」という意味の完了体動詞"показать"の一人称単数形。
"как Чебурашек обижать"は直訳すると「どうやってチェブラーシカを侮辱するか」となっちゃいますが…?
「チェブラーシカを罠にかけるような、こんないじめ方は認めない! 私がいつもチェブをいじめているやり方で、仕返ししてあげるわ!」ということでしょうか…? あるいは「チェブラーシカの正しいいじめ方を知っているのは私だけ!」ということかしら。なかなか歪んだ関係性ですねえ。
ところでこの"Чебурашек"というのは複数対格の形(活動体なので複数生格と同じ)をとっているように見えるのですが、チェブラーシカの名前って複数形にしてもいいものなんだろうか…?
"браконьеры"は「密猟者」を意味する名詞"браконьер"の複数主格形。
"несчастные"は「不幸な」という意味の形容詞"несчастный"の複数主格形です。
"найду"は先ほども出てきた「見つける」"найти"の一人称現在形。完了体動詞なので、現在形で「これから見つける」という未来を表します。
さて、シャパクリャクはものすごい勢いで、あっというまに観光客たちの滞在しているキャンプ場を見つけ出しました。
観光客たちが置いていった罠をキャンプ場のあちこちに仕掛け直し、荷物を漁ります。
シャパ:Сахарный песок... Сейчас я вам устрою сладкую жизнь!
(グラニュー糖ね…。今、あなたたちに甘い生活をあげるわ!)
"сахарный"は形容詞で「砂糖の」、"песок"は「砂」。
合わせて"сахарный песок"で「グラニュー糖」又は「粉砂糖」を意味します。
"устрою"は「催す、作る」という意味の完了体動詞"устроить"の一人称単数形。
"сладкую жизнь"は「甘い生活」"сладкая жизнь"の対格形ですね。
シャパクリャク、何やら意味深な台詞とともにテントの近くの小山(蟻塚?)から砂糖を垂らしていき、テントまで続く細い砂糖の道を作りました。
すぐに小山からアリの群れがワラワラと出てきて、砂糖に誘われテントの中へと吸い込まれていきます…!!
旅行客: Ой, мама!(わーっ、ママー!)
テントで寝ていた旅行客たち、たまらず飛び出してきました。そこへ仕掛けられた罠に全員が見事にはまり、シャパクリャクは高笑い。
いやー、見てるこっちも気分爽快ですね。
いじわるばかりで見てると腹の立つシャパクリャクばあさんですが、味方につければ心強い! ということがよくわかるエピソードです。
さて、マナーの悪い観光客たち、これで懲りたかな…? と思いきや、このあとまた何かやらかすようですよ!
続きは次回。
たいへんゆったりしたペースですが、少しずつ着実に進めていきたいと思っております。
では、またお会いしましょう!