水色の列車に乗って。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑧〜

こんにちは。

たいへんご無沙汰しております。語学大好きかあさん、マミです。

 

親ブログの方ではご報告したのですが、現在、二人目の出産を控えて産前休業中です。

仕事をしていたときはなかなか時間がとれなかったロシア語の学習も、休みに入ってまた徐々に進められるようになっていたのですが、

「ロシア語の部屋」の方の更新は相変わらず滞っておりました。

これから無事に出産が終われば育休に入りますので、少しずつ、いいペースでまた更新していければと思っております。

 

さて今回は、実に1年4ヶ月ぶり(!)となります、ソ連時代の人形アニメチェブラーシカ」ロシア語解説です。

DVDより第3話"Шапокляк"、最終場面の解説が残っておりました。

 

 

※作品情報や「チェブラーシカ」プロジェクトを始めるに至った詳細などについては、こちらの記事をご覧ください(移転前の元ブログへのリンクです)。

「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ。〜プロローグ〜

 

 また、既に解説済みのエピソードについては、下記リンクをどうぞ(こちらも元ブログ)。

短編一作目『ワニのゲーナ』

短編二作目『チェブラーシカ』

 

現在解説中の『シャパクリャク』これまでの記事はこちらです。

カミカミアナウンスの魅力。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その①〜

ロシア語は流行歌も美しい。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その②〜

ボクが荷物を運んで、キミがボクを運ぶ。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その③〜

シャパクリャクの、甘〜い生活。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その④〜

仕事中にワニの来訪。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑤〜

きれいな緑のプレゼント。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑥〜

ワニのほうが紳士的。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第三話〉 その⑦〜

 

  さて、波乱万丈の旅を終え、列車に乗って帰路に着くチェブラーシカたち。

ワニのゲーナは得意のガルモーシカ(гармошка、ロシアのアコーディオン)を弾き語りしています。

 

 

Гена:

Медленно минуты уплывают в даль,(ゆったりと時は遠くへ流れ去り)

Встречи с ними ты уже не жди.(彼らとの再会はもう待つべくもない)

И хотя нам прошлого немного жаль -(僕たちは過去を少し惜しく思うけれど)

Лучшее, конечно, впереди!(より良い未来はもちろん、この先に!)

 

"медленно"は副詞で「ゆっくりと」。 "минуты"は名詞"минута"(分)の複数形で「時間」を表します。

"уплывают"は不完了体動詞"уплывать"「泳ぎ去る、ゆっくり消える」の三人称複数形。完了体は"уплыть"です。

"даль"は名詞「遠方」。

 

"встречи"は名詞"встреча"(出会い)の複数形。"с ними"と続くので、ここでは「彼ら(過ぎ去った時間)との出会い(再会)」となります。

"ты уже не жди"の"жди"は"ждать"(待つ)の命令形なので、直訳すると「君はもう待つな」となります。

この目的語は上に出てきた「再会」なので、ここでは「もう過ぎ去った時間に再会することはできないよ」といったニュアンスでしょうか。

 

"хотя"は「〜とはいえ、〜けれども」という意味の接続詞。

"жаль"は「残念に思う」という意味の語で、「誰にとって残念か」を与格、「何を残念に思うか」を生格で表します。

ここでは"нам прошлого немного жаль"なので、「私たちにとって、過去が惜しく思われる」という意味になります。

"лучшее"は「より良い」という意味の形容詞"лучший"の中性形で、ここでは名詞化して「より良い未来」という意味。

"впереди"は副詞で「前方に、将来に」という意味です。

 

 

*Скатертью, скатертью, дальний путь стелется,(テーブルクロスに、テーブルクロスに、長い旅は広げられる)

и упирается прямо в небосклон.(そしてまっすぐ地平線に向かってゆく)

Каждому, каждому, в лучшее верится.(それぞれに、みんなが、より良い未来を信じてる)

Катится, катится Голубой вагон.*(走る、走る、水色の列車)

 

"скатерть"は名詞で「テーブルクロス」。辞書には、詩的表現として「平らな平面」という意味もある、とされていました。

この後に"дальний путь стелется"(遠い旅程が広がる)と続くので、「僕らの(人生という)旅はどこまでも広がってゆく」と言いたいのかしら。

ちなみに"стелется"は不完了体動詞"стлатся"(広がる、延びる)の三人称単数形です。

 

"упирается"は不完了体動詞"упиратся"の三人称単数形。完了体"упереться"です。意味は「寄りかかる、もたれる、突っ張る、端まで行って終わる、ぶつかる」。

名詞"небосклон"は「水平線、地平線」なので、「(僕らの旅は)地平のかなたへと突き進む」という表現。

 

"верится"は不完了体動詞"вериться"の三人称単数形。受け身の形で「信じられる、信仰される」という意味です。

この動詞は、「誰に信じられているか」、つまり「誰が信じているか」という意味上の主語を与格、「何を信じているか」という目的語をв+対格で表します。

つまり、"каждому в лучшее вериться"で、「それぞれ皆が、より良い未来を信じている」という構文になります。 

 

"катится"は不完了体の定動詞"катиться"の三人称単数形。意味は「転がる、急速に走る」です。

 

 

Может, мы обидели кого-то зря(たぶん、僕たちは誰かをいたずらに傷つけたりしただろう)

Календарь закроет этот лист.(カレンダーはそのページも閉ざしてしまう)

К новым приключениям спешим друзья,(新しい冒険へと急ごう、友よ、)

Эй, прибавь-ка ходу машинист!(さあ、スピードを上げていこう、機関士さん!)

 

"обидели"は完了体動詞"обидеть"(侮辱する、傷つける、怒らせる)の複数形過去。

"зря"は「無駄に、いたずらに」という意味の副詞です。

 

"закроет"は完了体動詞"закрыть"の三人称単数形。

名詞"лист"は「葉」という意味が転じて「1枚の紙」という意味で使われる語です。

ここでは「カレンダーは、(僕らが誰かを傷つけた過去も)閉じ去って未来へと進んでいく」という意味になりましょうか。

 

"приключениям"は名詞"приключениe"(予期しない出来事、冒険)の複数与格。

"спешим"は完了体動詞"спешить"(急ぐ)の一人称複数形なので、「(友よ、)急いで行こう」と勧誘する意味になります。

"прибавь"は「付け加える、増やす」という意味の完了体動詞"прибавить"の単数命令形。対格形、生格形を補語にとります。

指小辞"-ка"がついているので、「ねえ、(スピードを)上げてよ」と命令形の語尾をやわらげる働きがあります。

"ходу"は「速度」"ход"の生格形。

"машинист"は「機械技師」ですが、ここでは列車の上が舞台なので「機関士」としました。

 

 

*繰り返し*

 

Голубой вагон бежит-качается,(水色の列車は走る、揺れる、)

корый скорый поезд набирает ход.(疾走する列車はスピードを上げる)

Ну, зачем же этот день кончается-(ああ、何のために今日という日は終わりゆくのかー)

Пусть бы он тянулся целый год.(この日を一年中続かせてほしいのに)

 

*繰り返し*

 

"бежит"は不完了体の定動詞"бежать"(走る)の三人称単数形。

"качается"は同じく不完了体動詞"качаться"(揺れる)三人称単数形です。

 

この次の"корый скорый"について。

"корый"という語は辞書を引いてもwebで検索してもヒットしなかったので、"скорый"(速い)という形容詞と語調を合わせるための造語なのでしょう。

"набирает"は不完了体動詞"набирать"(集める、貯える)の三人称単数形。

 

"зачем"は疑問の副詞「どんな目的で、何のために」。

 

"пусть"は「〜させてほしい」と命令や希望をあらわす語。

"тянулся"は不完了体動詞"тянуться"(伸びる、広がる)の男性形過去。希望を控えめに述べる助詞"бы"と共に用いられているので過去形になっています。

つまり、ここでは「今日という日がいつまでも終わらず、1年の長さになるまで続いてほしい」という願望を表しています。

 

 

過去への哀惜、そしてこれからへの希望。

誰かを知らず傷つけたり、傷ついたりしながら、それでも僕たちの友情は変わらずここにある。

大切な人と一緒に過ごせる「今」がいつまでも続くよう願いながら、未来へと向かっていこう…。

というような歌でしょうか。少なくとも、私はこのように解釈しました。

 

うまくいかないことがあっても、誰のせいにするでもなく、今日も明日も変わらずただ前に進んでいく。

そんなゲーナたちのいじらしい生き様が、疾走感がありながらも切なげなメロディに乗せて歌われます。

 

明日はきっと、いいことあるといいな。

そんな予感を残して物語は終わります。

チェブラーシカ」第3話「シャパクリャク」、これにて終幕。

次回は、いよいよ最終話「チェブラーシカ学校へ行く("Чебурашка идёт в школу")」を解説してまいります。

 

 

そして、「チェブラーシカ」ロシア語解説の合間に、今やっているロシア語学習の内容や、最近見つけた学習コンテンツの紹介などもやっていきたいと思っています。

 

次回の更新は、先日ロシアから通販で取り寄せた絵本「はらぺこあおむし」のロシア語版"Очень Голодный Гусеница"を使ってロシア語を学んでいく予定です。

 

では、また近いうちにお会いしましょう〜。